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第10回 『環境とネモト〜(1)蛍光灯点灯管』 (2001/06/15)

根本特殊化学株式会社 相談役 村山義彦

 一昨年記載した 「蛍光灯とネモト」と題したコラムの中で、 蛍光灯用の点灯管には、ネモトが開発した特殊電極線が用いられており、 スイッチを入れるとすぐに蛍光灯が点灯するという優れた機能をもたせている ことを述べた。そして、それは微量な放射性物質を利用した効果によるものだと 説明した。

 こうした点灯管の優れた特性は、放射性物質の利用なしでは得られないものだ として社会のニーズが続いたため、ネモトではそれに応じて、 この点灯管用特殊電極線を1974年から2000年に至るまで、 延べ30億本を超える数量を生産した。

 しかし、今や地球環境問題を配慮することなしには、 事業活動は成り立たないという時代となった。 そして、企業は並べて環境重視の方針を打ち出して対応を進めている。 そうした中で、この点灯管も、いかに微量で安全であるとはいえ、 「放射性物質を含むものを環境に廃棄することは問題があり」とされるのは 必然であると考えられた。

 ネモトの研究開発陣はこうした社会状況の変化を見据え、 放射性物質を用いなくとも、点灯管の放電開始特性を改善する手段を探り、 1993年に開発した「長残光性蛍光体(N夜光;ルミノーバ)」の残光が 利用できないものかと考えて研究を開始した。 そして、ある程度満足する結果を得たので、1997年6月、 照明学会応用物理学会共催の 「第12回光源物性とその応用研究会」で、研究成果を発表したのである。

 蛍光体の残光による点灯管の暗中における放電開始特性改善の作用メカニズムは、 これまでの放射性物質からの放射線による電離作用を利用するものとは異なり、 残光の光で、点灯管の電極表面にある酸化バリウム(エミッター材)を刺激して、 「光電効果」により電子の放出を促して放電を起こさせようとするものである。

 実験には、次の3種類の長残光性蛍光体が用いられた。

蛍光体組成 発光色 発光ピーク波長
SrAl2O4:Eu,Dy (G) 黄緑 520nm
Sr4Al14O25:Eu,Dy (BG) 青緑 490nm
CaAl2O4:Eu,Nd (V) 紫青 440nm
写真:蛍光体を具備した点灯管
写真.長残光性蛍光体を具備した点灯管
(上部に円形に付いているのが蛍光体)

 実験は写真に示すように、放射性物質を含まない点灯管の一部に蛍光体を具備し、 通常点灯管のある位置の照度(10,000ルクス)の蛍光灯の光を30分間照射した後に、 暗所に置いて経過時間による放電開始時間を読み取る方法で行った。



図1:長残光性蛍光体の種類と放電開始特性
図3.NAP-701湿度依存性

 実験の結果では、3種類の長残光性蛍光体はいずれも点灯管の放電開始特性の改善には 有効であることがわかった。 中でも、残光の光子エネルギーの高いものほど(すなわち、発光波長の短いものほど) 放電開始特性を良くする効果が大きく、CaAl2O4:Eu,Nd蛍光体を 用いることが最も有利であるとの知見が得られた。


図2:40mgにおける励起光と放電開始特性
図3.NAP-701湿度依存性

 そして、CaAl 2O 4:Eu,Nd蛍光体を用いた場合には、 点灯管1個あたり、僅か40mgの使用で、168時間(=まる7日間)の暗所放置後においても、 従来の放射性物質を用いたものと、ほぼ同等の特性を示すことを確認した。

 この成果は、昼間明るくなる室内では全く問題なく、地下や暗室などでも、 一週間に1回点灯される場合においては、これまでの放射性物質を利用した 点灯管を用いたものと、全く優劣無いものであることを示している。



 現在、日本はもとより一部海外においても、点灯管に長残光性蛍光体 (N夜光;ルミノーバ)を利用するための試験検討が進められており、 まもなく市場に出現するものと期待している。

 ネモトが開発したN夜光・ルミノーバが、夜光時計に引き続き、蛍光灯の 点灯管の分野でも、環境のために役立つことになることは、大変嬉しいことである。



☆「残光」
学術的には「燐光」という。蛍光体が光などの刺激を受けて発光し、 刺激を止めた後になお発光を続ける現象をいう。

Copyright 1999 by Nemoto & Co.,Ltd , Yoshihiko Murayama