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第11回 『環境とネモト〜(2)害虫誘引駆除器』 (2001/09/03)

根本特殊化学株式会社 相談役 村山義彦

 蛍の美しい光の乱舞は、夏の夜の風物詩として日本人の愛する光景である。
その光もよく観ると、じっと動かずに光っているものと、空中を飛び交って光っているものとがある。 動かずにいるのがメスで、飛んでいるのがオスだという。 オスは、暗闇に動かずに点滅する光をメスと判断して、その光に誘われて飛来し、 無事子孫を残すことができるのである。

 蛍に限らず、光に誘われて集まる虫も多く、この習性を利用して以前から害虫の駆除に誘虫灯を用いる手法が行われてきている。

 地球環境問題に関心の強い、帯広畜産大学地域共同研究センターの渡辺洋介先生は、 ネモトが1993年に開発した「長残光性蛍光体(N夜光;ルミノーバ)」が蛍の光と同じ色の光を発光し、しかも一晩中発光を持続するという特性を、 「誘虫灯に代わって害虫の誘引に利用できないものか」と発想して、早速いろいろと実験を試みた。

表1. 野外の誘虫効果
鞘翅目 鱗翅目 双・半翅目 その他 合 計
試験区 4 1 58 4 68
対照区 0 1 0 1 2

 まず、ゴルフ場において農薬を散布せずに害虫を駆除することを目的とし、 N夜光で害虫を誘引し粘着剤で捕虫する方法で、実験を行った。 台湾での実験(11月)では、表1.に示されるような結果が得られ、 双翅目、半翅目類の虫(ヨコバエやウンカ類)がN夜光を用いない対照区より、 有意に多く捕虫されるという成果が得られた。
 また、茨城県の野外実験(9月)では、試験区捕虫数 777 に対し、対照区 178という実績が得られ、ここではクロバエやユスリカ類が多く捕虫された。
 こうした野外試験の成果は、日本芝草学会(1994年)において発表し、 N夜光の発光性能は充分に害虫の誘引効果を有していることを示した。


図:試験品
図.試験品

 ついで、屋内の害虫のイエバエについての誘引効果を調べる試験が、 イカリ消毒株式会社 技術研究所において実施された。(1994年12月)
75m2の広さの実験室の6箇所に、図のような試験品とN夜光のない対照品を並べておき、 約1000匹のイエバエ(オスメス成虫)を放虫して、24時間後に粘着シートに捕虫された数を対比する方法で行った。 その結果は、表2.に見られる通りとなり、イエバエについてもN夜光の誘引効果が実証された。

表2. イエバエの誘虫効果
1 2 3 4 5 6 合 計
試験区 49 25 57 77 63 25 296
対照区 13 11 38 11 22 18 113



写真1:ハエ取り紙の一例
写真1.ハエ取り紙の考案例

 また、再試験(1996年6月)を同じ条件で行って、試験区が対照区に比べ「捕虫率が3.2倍高い」という同様な実績を得たので、 それらの結果を日本衛生動物学会に発表した(1997年)。

 写真1.はハエ取り紙として考案された一例である。中央四角部分がN夜光シートで、周囲はすべて粘着紙で取替え可能につくられている。



写真2:「ムシペッタ」
写真2.「ムシペッタ」(右上:通常/右下:暗所)

 以前より「ムシペッタ」という商品名で、蛍光シールと粘着シートを組み合せ、 イエバエ、羽アリ、ガ、ユスリカなどの飛翔昆虫捕獲器を製造販売している シマダ商事株式会社は、 より性能アップを狙ってN夜光シートを付加した新商品を発売している。 写真2.はそれらの商品例を示している。



 最近は、N夜光も蛍の光の色のものだけでなく、発光色の異なるものがいろいろ開発されているので、虫の好みにあった光を発光するものが選べるようになった。 今後更に研究が進めば、いろいろな害虫を選択的に駆除することが、できるようになるかもしれない。

 いずれにしても、N夜光を利用して、「無電力」で、しかも「農薬なし」で害虫を捕獲駆除できれば、 ささやかではあろうが、N夜光が地球環境保全に役立つことになることは、大変嬉しいことである。



参考リンク:シマダ商事株式会社( http://shimada-sho.com/ )

Copyright 1999 by Nemoto & Co.,Ltd , Yoshihiko Murayama