根本特殊化学株式会社 相談役 村山義彦

 昔から恐いものは「地震、雷、火事、親父」と相場がきまっていた。  最近は、親父が脱落したようであるが、地震、雷、火事は今も変わらず恐ろしいものである。この中、地震と雷はいわば天災で人の力ではどうしょうもないが、火事は人災であって、人間の知恵と努力で防げるものである。  この”火事を防ぐ”というところに、実はネモトの技術が活躍しているのである。

昔は、火事の発見は人の眼で見つける以外に手がなく、発見が遅れて大火になることが多かった。 20世紀に入って科学技術が進み、「火災報知器」なるものが開発され、人のいない所でも発見できるようになった。それは、天井に取り付けられ、火が燃えて温度が上昇することで、その温度変化を感知して火災の発見を報知する仕組みのものである。しかし、それではある程度火が大きくならないとわからない。 もっと早く発見するためには、火がつく前に発生する「くすぶりの煙」が感知できれば、より早期に火災報知ができるのではないかと考え、「煙感知器」なるものが開発された。

煙感知器の種類と用途

煙感知器の種類と用途

煙感知器には二つの方法がある。一つは「光電式」で煙による光の透過度の変化を利用したもの、ほかの一つは「イオン化式」で、放射線の電離作用を利用して煙による電離電流の変化を感知するものである。後者の方が、煙の色や種類に左右されず感度や精度が高いことから、現在世界では図1に示すように圧倒的にイオン化式の方が多く使われている。


  イオン化式煙感知器はスイスのサーベラス社が最初に開発したが、日本のメーカもこれに対抗すべく研究が始まり、ネモトがその放射線源の開発を依頼されたのは1966年のことである。 ネモトは当時夜光塗料への使用が無くなったラジウムを活用することを考え、放射線源としては最も電離作用の強いα線を利用する密封線源を開発して評価を得た。

 

1線源2イオン化室型 煙感知原理図

1線源2イオン化室型 煙感知原理図

その後研究を進め、1970年には、ラジウムより安価で安全性の高い63Niが利用できること、また1972年には241Amも安全に利用できることなどの研究成果を学会で発表した。

1977年、ネモトは煙感知器用放射線源だけでなく、独自に煙センサそのものを開発しようと、電気技術者を加えて本格的研究開発に取り組んだ。 そして、図2に示すような原理の1線源2イオン化室で、従来のものより放射能を半減する優れた煙センサ(NIS-09)の開発に成功し、量産販売に入った。

 

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一方、煙センサ単独の販売ばかりでなく、独自の回路設計を完成して小型煙感知器を開発し、携帯用で小型目覚し時計と組み合わせたものや、たばこ箱サイズのスモーキーを生産し、海外に輸出した。

 

NIS-05A

NIS-05A

最近では、世界で最も少ない放射能で、しかも性能が優れた新型煙センサ(NIS-05A, 241Am 18.5kBq)を発表し、好評を得、販売数量を伸ばしている。

今後の開発目標は、放射能を更に減らし、BSS規制免除レベル *1(10kBq)を下回るもので、規制対象外となる煙感知器を完成することにある。

 



注釈)
*1 BSS規制免除レベル :IAEA(国際原子力機関)が1996年に発表した、RIの国際基本安全基準「Safety Series No.115 (BSS,Basic Safety Standard)」において規定された、規制から免除されることを認めても良いとされる放射能濃度または放射能量。241Amでは、放射能量として10kBqとなっている。
参照リンク:IAEA 1996 Publications

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